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街並み Vol.36(「特集 これからのまちづくりを考える」)より
http://www.tokyo-machidukuri.or.jp/machi/vol_36/m36_04_1.html

明日の災害に教訓を活かす ― 災害と専門家の社会的役割 ―

明日の災害に阪神・淡路大震災の教訓を活かす
- 阪神・淡路大震災で弁護士は何が出来たのか? -

弁護士 永井 幸寿

1 被災直後の弁護士・弁護士会

 阪神・淡路大震災(以下「震災」)から10年が経過します。震災で、約6400人の方々が亡くなり、20万棟の建物が全壊半壊全焼半焼しました。神戸弁護士会(現兵庫県弁護士会)では、弁護士自身が被災者となり、会員の9.5%が自宅が全壊半壊全焼半焼し、17.3%が事務所が全壊半壊しました。又、神戸弁護士会館は、神戸市の地域防災計画による指定避難所ではありませんでしたが、震災当日から市民が避難し、会員数が300人弱であるところ、ピーク時にはその2倍の600人が避難しました。そして、震災に起因して発生した法律相談は爆発的に増加し、弁護士会は、震災後の1年間で10万件をこえる法律相談に対応しました。
2 法律相談の態様

 震災のあった平成7年1月17日の2日後から、神戸弁護士会には、自治体から法律相談を実施するよう要請があり、1月26日から、電話回線を3本引いて無料電話相談を実施しました。電話からは「隣の家が倒れてきそうです。どうすれば良いのでしょう!」と悲鳴のような訴えがあり、前例のない相談に即答を迫られました。受話器を置くとすぐに電話が鳴る状態で相談は1時間でへとへとになりました。2月1日から弁護士会館で面談による無料相談を開始しました。又各地域に居住する弁護士が自治体と交渉して自主的に自治体で無料法律相談を立ち上げました。相談者が殺到して、初期は、役所の廊下等に長いすと机を置いて、ブースも何もなく、隣の声もまる聞こえの状態で行いました。

3 法律相談の機能


 関東大震災の経験で、裁判所は震災によって爆発的に民事紛争が発生するものと予想し、神戸地方裁判所にプレハブの庁舎を増設し、裁判官を増員しました。しかし、訴訟の件数は震災の前年の平成6年と比較して、震災の年の平成7年、8年、9年とも減少してしまったのです。
 その理由は、弁護士会が実施した震災後1年間の10万件の法律相談によって、被災者が法的な見通しを持つことが出来、被災者同士で話し合いによって紛争を解決出来たからです。災害時に被災者同士が争うほどの悲劇はありませんが(これは二次的災害と考えられます)、法律相談によって被災者は、エネルギーを争いにではなく、復興に向けることが出来たのです。
 又、被災者には、同じ危険をくぐり抜けてきた者同士という連帯意識と、命が助かっただけでもありがたいという価値観の転換が生じ、被災地には互助の精神と連帯意識が醸成されます。専門家はこれを「震災ユートピア」と呼んでいますが、ライフラインが復旧して、通常の生活が回復するに従って、この連帯意識・互助の精神は薄れてゆきます。従って、自主的な解決は震災直後からなされるのが最も効果的であり、この点で弁護士会が震災直後から法律相談を実施したことは、紛争の早期の解決のために有効なことでした。
 更に、災害時の法律相談はカウンセリングが強く求められます。被災者は、周囲の者が被災していることから、自分の苦労を訴える場がないからです。震災では弁護士自身が被災者だったために、被災者と同じ目線で被災者の話を聞くことが出来、その結果、精神的な支援を行うことが出来ました。これは、法律相談者1000人を対象にしたアンケート結果にも明確に現れています。

4 全国的な支援体制の構築と、中越地震で活かされた教訓


 ところで、震災当時、神戸弁護士会は300名弱の会員しかおりませんでしたが、隣接する大阪弁護士会をはじめとする近畿圏の弁護士や、全国からのボランティア弁護士によって10万件の相談が可能となりました。そこで、災害があった場合、全国の弁護士会が、被災地の弁護士会を支援するという体勢を平常時から構築することが必要であることから、兵庫県弁護士会が提案し、平成15年に日本弁護士連合会は「全国弁護士会災害復興の支援に関する規程」を制定しました。
 平成16年の新潟県中越地震では、上記規程が運用され、日弁連に「災害対策本部」が、関東圏に「支援統轄本部」が設置されました。又、新潟県弁護士会の要請を受けて、兵庫県の弁護士が新潟に派遣されて、レクチャーや会員研修を行いました。これを受けて新潟県弁護士会は法律相談を開始し、栃木、群馬、横浜等の関東圏の弁護士が順次新潟県に派遣され支援活動を行っています。

5 阪神・淡路まちづくり支援機構


 前記のとおり、震災では20万棟の建物が全焼全壊半焼半壊し、「まち」の復興が必要になりました。「まち」の復興は、不動産に関わることであり、弁護士だけで対応出来るものではなく、登記は司法書士、測量は土地家屋調査士、不動産の評価は不動産鑑定士、建物は建築士、税務は税理士が必要となります。ところが、行政が施行者となってまちづくりを行う地域(都市計画事業区域)は、被災地の3%弱しかなく、その他の97%は住民自身が「まち」づくりをしなければなりませんでした。「まち」づくりの主体となるのは住民であるのは間違いありませんが、その専門的知識も経験もありません。
 そこで、住民のまちづくりを支援するために「阪神・淡路まちづくり支援機構」(以下「支援機構」)が設立され、上記の6職種の専門家がワンパックで支援することとなりました。支援機構の構成員は個人ではなく、神戸弁護士会、兵庫県司法書士会、近畿税理士会等の専門家団体です。支援機構は、行政といたずらに対抗関係に立つものではなく、又行政の下請けにもならず、対等な立場で連携して住民の支援を行い、約30件のまちづくりを実施しました。

6 支援体勢の全国展開


 支援機構は、震災から1年8ヶ月後に設立されましたが、震災当時に存在していれば、震災直後から活動でき、より被災地に役立つことが出来たはずでした。そこで、平成12年の東京シンポジウムを契機として、平常時からこのような組織をつくることを全国に呼びかけました。これに呼応して、平成15年9月に静岡県で「静岡県東海地震対策士業連絡会」が設立し、平成16年11月には東京で「災害復興まちづくり支援機構」と神奈川県で「神奈川県大規模災害対策士業連絡協議会」が設立しました。平成17年2月には宮城県で「宮城県災害対策士業連絡会」が設立する予定です。

7 来るべき関東地震について


 首都圏では、関東地震が予想されております。震災は都市の直下型の地震であり、中越地震では被災地が山間部の農村だったことからかなり形態を異にしていました。震災の教訓がストレートにあてはまるのは、むしろ関東地震だと思われます。

(1)法律相談
 前記のとおり、法律相談が爆発的に発生することが予想されます。東京では、3弁護士会が、既に自治体と災害時の法律相談のネットワークを構築しています(「東京法律相談連絡協議会」)。又日弁連では前記の「全国弁護士会災害復興支援規程」が制定運用されているので、全国からの支援体制もととのいはじめています。

(2)まちづくりと専門家の役割
 震災では、行政主導のまちづくりの地域で、都市計画決定を行った行政と住民が激しく対立しました。又、行政が主導しないまちづくりの地域でも、住民相互が対立したところがあります。行政と住民が対立したところは、紛争に多大なエネルギーが費やされ、不信感を解消するのに長期間かかりました。住民相互に対立が生じた地域は、住民間のコミュニティーが崩壊するという悲劇が生じました。
 首都圏では、復興まちづくり支援機構(以下「復興支援機構」)が設立したので、行政が主導しない地域では、復興支援機構がまちづくりを支援することになるでしょう。又行政主導の地域でも、自治体は専門家派遣制度を導入すると予想されるので、ここでも復興支援機構の専門家が活動することになります。
 そこでの専門家の役割は、① 住民にまちづくりの制度を説明すること、② 再建メニューを具体的に提案すること、③ 住民の意見を調整し、住民の提案の集約をサポートすること、④ 住民提案を実施すること、となります。

(3)まちづくりの留意点
 そして、上記のような問題を生じさせないための注意点は、以下のとおりです。
 ① 専門家は現地の権利関係を調査し、住民の意見を把握しなければなりません。権利関係が入り組んだところもあり現地に密着することが必要であり、住民の意向は単なるアンケートを鵜呑みにすると誤りを犯すことになります。又 ② 再建メニューは実現可能なものでなければなりません。この機会に名をあげたい、職域を拡大したい等の気持ちで、無理な構想を提示すると実現が出来なくなります。③ 専門家は住民の意見調整や集約をサポートするものであり、逆に提案が住民の対立や混乱を招くものであってはなりません。特にマスコミへの広報は充分注意が必要です。④ 専門家は、行政から独立した立場で、住民をサポートし、行政の下請けになってはなりません。震災で対立や混乱が生じた地域は、専門家が最初から行政の立場で活動を行った地域です。⑤ 計画の実施には時間がかかります。震災では行政主導の地域でも10年前後が通常です。最後まで責任を持って実現することが必要です。

(4)支援制度のシステム化と連携へ
 ところで、上記の注意点を克服するには、長期間の間、現地に密着して、住民とコミュニケーションを充分に取り、信頼関係を築くことが必要となります。しかし、これは、本業を省みずに多大な労力と時間を費やすことになり、自営業である専門家は到底採算が合いません。被災者の支援は崇高なボランティア精神が必要でありますが、善意に依存してはまちづくり支援を制度として社会に定着させることは出来ません。そのためには、専門家の独立性を損なわない形で、専門家に対する適正な報酬が支払われるシステムを構築することが必要となります。震災で支援機構は自治体の外郭団体と協定して、費用程度の支払いを受けていましたが、首都圏では、これを対価性のある支払いが行われるよう、行政と連携しながらシステムを構築してゆくべきでしょう。


Profile >>>永井 幸寿(ながい こうじゅ)
現在、トアロード法律事務所所長。
昭和54年 早稲田大学法学部卒業。
昭和62年 司法試験合格。
平成11年 阪神・淡路まちづくり支援機構事務局長。
平成14年 兵庫県弁護士会副会長
平成16年 日弁連災害復興支援に関する全国協議会ワーキンググループ座長、日弁連新潟県中越地震災害対策本部本部員、兵庫県弁護士会災害復興等支援委員会委員長
著書≫「震災復興のまちづくりと法」三省堂(共著)、「大震災10年と災害列島」クリエイツかもがわ(共著)
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2005.03.01(Tue)06:43 | 8 記事・ニュース・関連
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